未来ーサキーの見えない明日までも。
 キッチンから出るなり祥花は抗議する。これではあんまりだ。


「余計な事を言うからだ」

「普通だよ! 全くもうっ」


 祥花は怒りながら二階へ上がって行った。奏多はキッチンに入り、夕飯の支度に取りかかる。

 祥多は札幌に出張中だ。こっちよりは涼しいんだろうなと思いながら玉ねぎを切る。今日は夕飯はオムライス。


 明日のプールをどうしようか考えながら、奏多は玉ねぎを細かく切っていった。















「やー! 夏はやっぱりプールだねぇ」


 美月が楽しそうに、子ども達の溢れるプールを見回す。

 達樹は美月の隣で何やらもじもじしている。


「んん? 達樹ぃ、どした?」


 美月がしゃがんで顔を覗き込むと、達樹は顔を真っ赤にする。


「煩ぇ!」

「まっ。アンタ照れてんの? しょうがないよね~! 私、ナイスバディだもんねー」


 アハハと豪快に笑い、ぽんぽんと達樹の頭を撫でる。


「傍迷惑です、美月さん」


 達樹が憐れに思えた奏多は口を挟む。


「ちょっと奏多! アンタも少しはときめきなさいよね! ほら、胸だって結構大きいんだから」


 美月が胸を強調すると、克利が耐えられないという風に奏多に寄りかかって来た。奏多は克利に同情する。

 奏多は興味がないだけだが、克利は全く苦手なのだ。


 そんな三人を横目にプールに飛び込もうとした達樹は、美月に頭を掴まれ阻まれる。


「何すんだよ!」

「準備体操。してから入りなさい?」


 有無を言わさぬ笑顔に怯み、達樹は渋々従った。一人で準備体操を始める。


「美月姉、サヤは?」


 一緒に来たはずの祥花が見当たらない事を不審に思った克利が尋ねる。


「サヤなら更衣室。ベンチでぐったりしてて、ちょっと遅くなるって」

「あぁ、暑さでフラフラしてたからな」

「可愛いよねぇ、暑さにやられたーって。……噂をすれば」


 フラフラしながらもさっきよりはちゃんとした足取りで、祥花がこちらに向かって来る。
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