未来ーサキーの見えない明日までも。
 長い髪を上で結わえてあり、オレンジ色の水着がよく似合う。


「ごめ~ん。遅くなりました」


 祥花は目を細め、のほほんと笑っている。暑さにやられたせいだ。


 奏多は祥花を見て、大きく目を見開く。

 美月が笑顔で祥花を出迎えた。


「サヤ、少し胸大きくなったでしょ」

「えー。みっちゃんには敵わないよー」


 いつもの祥花なら、真っ赤になって全否定していそうなものだが、どうやら頭が回ってないらしい。


「ねぇ? 奏多」


 美月の問いかけに、奏多は我に返る。


「興味ないです」

「アンタそれでも男?!」


 美月は奏多を糾弾する。克利は再び奏多に寄りかかっていた。


 祥花は一緒に育って来た双子の姉弟だ。しかしいつしか互いの体に変化が訪れ、距離が出来た。


 ──そうだ、彼女は。双子である前に、姉である前に、女だった。

 奏多はそんな事を再確認する。

 常に一緒にいて、冗談を言い合っていたのですっかり忘れてしまっていた。


「体操終わった! 行くぞ!」


 達樹が威勢よくプールに向かって行った。一人で行かすのは危ないと思い、克利がついて行く。


「私も入る! 暑い!」


 祥花は軽く体を動かし、プールの中に入る。

 美月と奏多はプールサイドに座り、足だけ水に浸かった。


「ぬるぅい」

「しょうがないね。人多いし」

「んー」


 祥花は何とも言えない複雑な顔をする。


「アンタ達、進路は決まってるの?」

「私、御崎(ミサキ)」

「昭華(ショウカ)」

「えっ? アンタ達、進路別々なの?」


 てっきり同じ高校に行くと思っていた美月は、目を丸くする。


「昭華なんて頭の良いとこ行けませんー」

「私、昭華だけど」

「みっちゃん頭良いじゃん」

「行く気あるならカテキョしてあげるよ?……て、アンタすぐ近くに良い先生がいるじゃん」

「へ?」

「ね、奏多先生」


 あぁ…と祥花は肩を落とす。
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