未来ーサキーの見えない明日までも。
奏多は学年で三位から五位の間を維持する優等生だ。
「奏多から教えてもらえばいいじゃんね」
「やだよ。奏多スパルタだもん」
「じゃ、私から習う?」
「……考えとく」
ぶくぶくと泡を立てながら祥花は水の中に沈む。
きゃあきゃあと騒ぐ子どもの声が室内に響く。
「ひゃっ!」
祥花が突然声を上げたかと思えば、すぐさまプールから上がる。
「どした?」
美月が不思議そうに首を傾げる。祥花は笑顔を作って美月に言った。
「ごめん。学校に忘れ物しちゃった。戻って来てまた入るのもあれだし、帰るね」
「えー」
「また今度。じゃね」
祥花は逃げるように更衣室へ向かって行った。奏多もプールから上がる。
「奏多?」
「俺も行きます」
「ちょっと、祥花もそんな子どもじゃないんだから。過保護はダメだよ」
「暑い中、倒れたら大変なんで」
「なんだそっちか。分かった分かった、行ってらっしゃい」
奏多は軽く会釈すると、更衣室に向かった。
美月はそんな奏多の後ろ姿を見つめ、小さな溜め息を吐いた。
女子更衣室を出ると、ベンチに着替えた奏多が座っていた。祥花は奏多に駆け寄る。
「どうしたの、奏多」
「帰るぞ」
「え? あっ」
行ってしまいそうな奏多を、祥花は慌てて追いかける。
「何、どうしたの?」
「こっちの科白」
「え?」
「忘れ物したくらいで行かないだろ。外暑いから」
「あ」
思えばそうだ。明日も部活がある。祥花なら、わざわざ暑い中取りには行かない。
美月は騙せても、奏多は騙せなかったようだ。
「何があった」
「大した事じゃない、よ」
「いいから言え」
「……体、触られたの」
「!」
「それで、びっくりして。あの一件以来、そういうのに過剰反応しちゃって」
祥花は苦笑いを零す。
奏多は気遣うように祥花を見つめた。
「奏多から教えてもらえばいいじゃんね」
「やだよ。奏多スパルタだもん」
「じゃ、私から習う?」
「……考えとく」
ぶくぶくと泡を立てながら祥花は水の中に沈む。
きゃあきゃあと騒ぐ子どもの声が室内に響く。
「ひゃっ!」
祥花が突然声を上げたかと思えば、すぐさまプールから上がる。
「どした?」
美月が不思議そうに首を傾げる。祥花は笑顔を作って美月に言った。
「ごめん。学校に忘れ物しちゃった。戻って来てまた入るのもあれだし、帰るね」
「えー」
「また今度。じゃね」
祥花は逃げるように更衣室へ向かって行った。奏多もプールから上がる。
「奏多?」
「俺も行きます」
「ちょっと、祥花もそんな子どもじゃないんだから。過保護はダメだよ」
「暑い中、倒れたら大変なんで」
「なんだそっちか。分かった分かった、行ってらっしゃい」
奏多は軽く会釈すると、更衣室に向かった。
美月はそんな奏多の後ろ姿を見つめ、小さな溜め息を吐いた。
女子更衣室を出ると、ベンチに着替えた奏多が座っていた。祥花は奏多に駆け寄る。
「どうしたの、奏多」
「帰るぞ」
「え? あっ」
行ってしまいそうな奏多を、祥花は慌てて追いかける。
「何、どうしたの?」
「こっちの科白」
「え?」
「忘れ物したくらいで行かないだろ。外暑いから」
「あ」
思えばそうだ。明日も部活がある。祥花なら、わざわざ暑い中取りには行かない。
美月は騙せても、奏多は騙せなかったようだ。
「何があった」
「大した事じゃない、よ」
「いいから言え」
「……体、触られたの」
「!」
「それで、びっくりして。あの一件以来、そういうのに過剰反応しちゃって」
祥花は苦笑いを零す。
奏多は気遣うように祥花を見つめた。