未来ーサキーの見えない明日までも。
夏休みに入って十日目。
三者面談ならぬ、四者面談が行われた。
同じクラスで双子だともうまとめてしまえ、という感じだ。担任である山城は一応、別々にという提案もしたが、祥多が面倒臭いからと四者面談になった。
猛暑が続く中、クーラーの入った教室は正に天国。祥花は机の上に突っ伏していた。
「えー、まずは出席番号順で奏多からいこうか」
情熱派の山城豪は爽やかに歯を見せて笑った。生徒からは疎まれながらも、何故か不評はない不思議な教師だ。
「昭華か」
「はい」
「奏多の成績なら、もっと上の八嶋はどうだ?」
「や、いいです」
「何で?」
「雰囲気が嫌なんで」
「そうか。それで、将来は公務員と書いてるが」
「夢も何もないんで」
「……ま、焦る事はない。高校で見つければいい」
「はい」
奏多は軽く頭を下げる。
「奏多は心配ないです。ただ、少し協調性が欲しいくらいで」
山城は祥多に言う。すると祥多は苦笑いを浮かべた。
「どうもそういう性分で。何か迷惑はかけていませんか」
「いえいえ、とんでもない」
手を振って否定すると、山城は机の上に突っ伏している祥花に目をやり、咳払いをする。が、祥花は反応しない。
「26番! 時枝祥花!」
「ぅわハイ!」
「奏多は終わった。次は祥花の番だ」
「ゔー」
泣きべそかきながら、祥花はきちんと姿勢を正す。
「祥花は御崎か」
「ダメですか」
「いや、もう一つ上の昭華はどうだ?」
「……へ?」
「成績も悪くない。将来、子どもに関わる仕事に就きたいなら大学進学だろ? 御崎より昭華の方が進学率は良いからな」
「昭華ですかぁ?」
「ああ。この夏に奏多に勉強見てもらえ。そうすれば安全圏内だ」
「んー。奏多、スパルタだからヤです」
きっぱりと言い切る祥花。奏多は無表情、祥多は腹を抱えて笑う。