未来ーサキーの見えない明日までも。
「じゃあ自分で勉強しろ。三十番以内に入るんだから、自分で出来るだろ」

「そーします」

「昭華に変更するか?」

「うーん」


 頬杖ついて悩み出す祥花に、祥多が言う。


「父さんは昭華を勧める」

「え、何で?」

「祥花にはちゃんと夢があるのと、二人が同じ高校だと楽だから」

「……お父さん。二言目、余計だよ」

「そういう訳だ。昭華にしろ、祥花。そしたら父さんも鼻高々だ」


 そうまで言われてしまえば、祥花に反論の余地はない。元々、御崎にこだわっていた訳でもない。


「じゃ、昭華で」

「よし、頑張れよ。先生がバックアップするからな」

「や、いいです。自分で乗り切ります」

「そうかそうか、頼もしいな」


 山城は豪快に笑い、何度も首を縦に振った。


「よしよし。お父さん、二人とも大丈夫です。安心なさって下さい」

「ありがとうございます」

「お忙しい中、お疲れ様でした」

「いえいえ」


 面談を終えた三人は、校舎を後にする。


「ん? サヤ、部活じゃないのか」

「今日は面談がありますって言ったら、そのまま帰っていいって」

「そーかそーか。んじゃ、たまには親子三人水入らずで歩いて帰るか」

「うん!……え?」

「ん?」

「車じゃないのぉ?!」

「歩いて15分20分の距離を車で来る訳ないだろ。ただでさえガソリン高騰が騒がれてるんだからな」

「ひっどーい!」

「若いんだから歩け」

「歩くのが嫌なんじゃなくて、暑いのが嫌なの! お父さんのバカ!」


 祥花は声を荒げ、若干フラつきながらもずんずん先を歩いて行く。

 祥多は苦笑いを零した。


「誰に似たんだろーな、暑さに弱いとこ」


 一人呟き、前方を歩く祥花に声をかける。


「サヤ! 冷たいもん食って帰るか?」


 すると祥花は目を輝かせて戻って来る。


「ほんと?! 私アイス!」


 喜ぶ祥花に祥多は笑い、奏多は呆れた顔をしていた。





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