未来ーサキーの見えない明日までも。
「サヤが浴衣着せてって言うから、お母さん張り切っちゃって私にまで着せたの。変?」

「そんな事ないですよ」

「良かった」


 美月は持っていた小さな団扇で自身を扇いだ。


「そういえば、三者面談終わったんでしょ? サヤはどうするって?」

「昭華に決めたみたいです」

「そっか、良かった。御崎にサヤはもったいないもん」

「……そうですか」

「アンタね、御崎って言ったら学年最下位でも受かるって言われてるお気楽校だよ?! そんなとこにサヤをやれないっての!」


 本気でそう思っているらしく、美月は闘心剥き出しで拳を握っていた。


「克利も昭華だし、来年が楽しみだ」


 優雅に団扇を扇ぎ、美月は笑っていた。


(自分は関係ないが)これで落ちたら後が大変だろうなと思った。

 克利の心配はしなくていいにしても、サヤはそそっかしい。三人の中で一番落ちる可能性が高い。


 徒歩三十分で祭り会場に到着した。達樹は途中で歩き疲れたようで、克利に背負われ眠っている。


「ごめん、克利。うちの弟背負わせて」

「平気」

「すっかり眠っちゃってるし」

「花火が始まるまでこのままおんぶしとくよ」

「私、代わろうか」

「何言ってんだ、美月姉。せっかくの浴衣が崩れる」

「でも」

「大丈夫だって。それに俺、男だし」

「…ありがと」

「どういたしまして」


 二人はすやすやと寝息を立てる達樹を覗き込み、祭り内を皆で回り始める。


「祥ちゃん! あれ食べたい!」

「……サヤ。買ってやるから、ちゃんと父さんって呼べ。心臓に悪い」


 祥多は苦しそうに胸を押さえ、よろけて見せる。


「あははっ! じゃあワガママ聞いてくれなくなったら、また呼ーぼおっと」

「おいおい」


 楽しそうな祥多と祥花を見つめ、奏多や美月や克利は歩く。
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