未来ーサキーの見えない明日までも。
「どうしてそう思うの?」

「人は人と出会って成長し、変化していくものだからな」


 父親の顔をして笑う祥多に、祥花は意思を固めた。


 ずっと内緒にして来た事。言えなかった事。

 こんな風に言ってくれる父なら理解してくれると思った。


 今なら言えるだろうと思った。


「里田先生、知ってるよね」

「ああ。吹奏楽部の顧問だろ? 確か、フルートを教えてくれてるんだよな」

「うん。凄く尊敬してるんだ。私にフルートと、フルートの楽しさを教えてくれた」

「そうか」

「……好きだったんだ。中1の時からずっと。好き、だったんだ」

「そうか」


 静かに頷く祥多に、祥花の方が驚く。

 理解してくれると思って告白したが、驚きを見せないのは予想外だった。


「昔な、花音が言ってたよ。高校の時に憧れた先生がいたって。恋とは少し違った憧れだったって言ってたけどな」


 祥多は複雑な心境で苦笑する。


「同級生の男子は精神的に幼く見える時期があって、女の子は少なからず大人の男の人に憧れるもんなんだって」


 母も歳の離れた異性に憧れた事があったのだと知り、祥花は少しだけほっとした。

 そんな祥花を見て、祥多は優しく頭を撫でる。


「今は好きじゃないのか?」

「……うん」

「そうか。サヤ、一つだけ言っておく。人を好きになるのに、年齢の差は関係ないからな」

「お父さん…」

「お前がいつか、本当に好きな奴と幸せになってくれれば、父さんはそれでいい」

「……お父さんより歳上の人を家に連れて来たら?」

「ゔっ。あー、いや、うん。その時はその時だな。お前が好きなら仕方ない」

「あははっ。お父さんかっこいい!」

「だろ?」


 冗談を言い合い、二人は笑った。
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