未来ーサキーの見えない明日までも。
三章≫秋、侘しさ残る紅葉狩り。
夏の名残か、少し暑さが残った九月上旬が新学期の忙しさによってあっという間に過ぎ去り、気づけば九月中旬を迎えていた。
夏の暑さは背中を見せていて、大分涼しさを感じられるようになっていた。
そんな中にやって来るのは、全学年一斉遠足。とは言っても行く先はそれぞれに違う。
今年の三年生の遠足は紅葉狩り。浅霞(アサカ)山と呼ばれる紅葉狩りの名所に出向き、日頃の受験戦争の疲れを癒そうというのが目的らしい。
一年生は水族館、二年生は歴史博物館という中学生らしい遠足なのに対し、三年生は紅葉狩り。年寄じみて嫌だ、と生徒達のブーイングは凄まじかった。
しかし結局、決定を翻す事は出来ず、今日この遠足の日を迎える。
各学年が貸し切りバスに乗り込み、各遠足先へと向かった。
「せんせー、紅葉狩りなんてつまんなーい」
「何で紅葉狩りなわけー?」
「まだ水族館の方がマシだよ」
祥花や奏多や克利が乗るバスの中は、担任である山城豪へのブーイングの嵐だった。
「そう言うな。先生方がお前達の事を考えての紅葉狩りなんだ」
最前列の座席の横に立ち、山城は教え子達を宥める。
「嘘つけー! 適当だろ!」
「ばかやろー!」
女子より男子の方が躍起になって反抗している。
女子からしてみれば、紅葉狩りはそう嫌な訳ではない。綺麗なものが好きなのは大抵共通で、夢見がちな女子からすると、ある程度ロマンがあって悪くはない。
「サヤは賛成? 反対?」
祥花の隣に座る女子が尋ねて来る。祥花は窓の外に向けていた目を彼女に向けた。
「反対派」
「え、マジ? 珍しいね、サヤがこういう事で反対派に回るってて」
「紅葉、あんまり好きじゃないんだ」
苦笑いを浮かべながら、祥花は視線を窓の外に戻した。
バスからはもう、紅葉した浅霞山が見えている。
気づかない内に、苦虫を噛んだような顔になる。
……紅葉はどうしても、好きになれない。