未来ーサキーの見えない明日までも。
 双子であり、共に育って来た祥花ですら、時々何を考えているのか分からなくなる。


「ねぇ、今年は同じクラスかな? 一年の時も二年の時も違ったよね」


 祥花はめげずに、比較的明るい声で奏多に話しかける。


「多分な」

「え? 奏多、分かるの?」

「勘」

「勘か。奏多の勘って結構当たるんだよねー」


 そんな会話をしている内に、学校に到着する。正面玄関の前にはやたらと人だかり。どうやら、もうクラス替えが発表されているようだ。


「うぅ。緊張するー」


 祥花が不安そうに呟くのを横目に、奏多は溜め息を吐く。


 常に笑顔で明るくお調子者である彼女は、毎年この日だけは緊張で顔を曇らせる。意外と繊細なのだ。

 新しいクラスは馴染みやすいか、大丈夫だろうかとあれこれ悩み、立ち竦む。


 仕方なく、落ち着きのない姉を一人置き去りにし、奏多はクラス発表を見に行った。

 自分と姉の名前を探す。と、案外あっさりと見つかった。

 三年二組に二人の名前はある。


 出席番号まで確認し、奏多は祥花の元に戻る。祥花は不安に満ちた顔で奏多を見つめた。


「二組」

「だ、誰が?」

「双方」

「ほんと? 良かったぁ…」

「行くぞ」

「ま、待って」


 祥花は慌てて奏多を追う。奏多は祥花に気を向ける事なく正面玄関に入って行く。


「他に誰がいるとか、見た?」

「……トシがいたな」

「やった! 幼なじみ三人同じクラス!」


 祥花は嬉しそうに靴を脱ぐ。


 トシというのは、二人の家の近所に住む男の子だ。根津克利(カツトシ)。

 硬派で口が固く、二人の信頼を得ている人物。祥花からはトシ君、奏多からはトシと呼ばれ親しまれている。


 教室の扉を開けようとした奏多の腕を掴み、祥花が制する。

 奏多は怪訝そうな顔をして祥花を見る。


「何」


 奏多がそう問うのと、祥花が奏多の手を取るのはほぼ同時だった。

 祥花はぎゅうっと奏多の手を握ったかと思うとすぐに放す。奏多は意図が分からず、祥花の一連の動作を見つめていた。
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