未来ーサキーの見えない明日までも。
「あ、でも高そう…」


 食らいついてすぐにしゅんと落ち込む。

 一応、女子高生。バイトもしていない学生はあまり高価な物には手が出せない。


「二千五百円くらいだったと思う」

「二千五百か…。厳しいな」


 財布の中身と睨めっこをする美月。

 本来の予算は一人千円程度で、皆への購入済みのプレゼントも予算に適っている。

 二千五百円。ない事はないがしかし、千五百円のオーバーは結構きつい。


「どうしよう…」


 真剣に悩む美月の隣で、さっきの咄嗟の発言を後悔している克利。

 学生には簡単に手は出せない。考えればすぐに分かる事だ。

 自分の考えなしの発言が美月を悩ませていると思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。


「美月姉、やっぱり他のプレゼントを考えよう」


 新たに提案してみるも、美月は聞く耳持たず。克利はますます焦る。

 おじさんにクリスマスプレゼントはそれがいいとねだっているかもしれないと言おうとした克利だったが、美月の意思はすぐに固まった。


「よし、買う! 奏多のクリスマスプレゼントはリストのCDだーっ!」


 本屋だと言う事を忘れ、意気揚々と決意する美月の横で、克利は止められなかった事の反省を始める。

 そんな克利とは裏腹に、満面の笑みを浮かべている美月。


 痛い出費の事よりも奏多へのプレゼントが決まった事の方が嬉しいらしく、にこにこしている。

 そんな美月を見て、まあいいかと思い直す克利。


「ところで、リストのCDって何?」


 今更の質問に、克利は肩を落とした。

 あはは…と笑いながら頭を掻く美月。


「フランツ・リスト。音楽家」

「ああ! クラッシック関係ね」


 美月は納得したように数回頷く。


「ごめん、ごめん。音楽はからきしダメで」

「知ってる」

「はは……じゃ、行こっか、CDショップ」


 美月と克利は書店を後にし、フランツ・リストのCDを購入する為にCDショップへ向かった。





< 63 / 78 >

この作品をシェア

pagetop