未来ーサキーの見えない明日までも。
 つい二時間前の事だ。

 同じ図書委員の二年生、原康昭に呼び出された。何かと思えば、祥花の事が好きなのだと言う。

 あまりにも唐突な発言に唖然とする奏多を気にも止めず、原はクリスマスプレゼントを渡して告白がしたいから仲を取り持ってくれと言う。


 原は本好きであり、図書委員の中でも真面目で積極的に仕事を請け負う人物で、奏多も好印象を持っていた。それに加え、自分を慕って来る唯一の後輩である。

 そんな原から初めて頼み込まれ、奏多は断る事が出来なかった。


 クリスマスに祥花を商店街の噴水広場に連れて来て、自分の事を紹介して欲しい。それだけでいいと必死に頼み込む原に押され、奏多は結局了解してしまった。


「はあ……」


 やはり請け負うべきではなかったと後悔の念に駆られるが、今更断れない。

 それに、原の表情は真剣そのものだった。一世一代の思いで祥花に想いを伝えようとしているのだという気迫が伝わって来た。


 原が真剣であるという事が分かれば分かるほど、奏多は乗り気がしなくなる。

 何故だかもやもやしていて、可愛い後輩の為に一肌脱いでやろうと思えない。

 元々、人と人との間を取り持つのは性に合わない。乗り気がしないのも、それが相まってだろうと奏多は自らを納得させる。


「クリスマスか…」


 今日が23日だから、明後日になる。

 深い溜め息をつき、奏多は項垂れた。















 祥花や奏多、美月に達樹、克利の五人での毎年恒例のクリスマスパーティーはさぁっと過ぎ去り、クリスマスがやって来た。

 今日は皆、各家庭でのクリスマスパーティーだ。


 時枝家も夜、祥多が帰宅すると始める事になっている。

 そんな、クリスマスの午後3時。祥花は奏多に連れられ、行き先も知らぬまま歩いていた。


「ねー。どこ行くのー」

「いいから黙ってついて来い」

「意味分かんない。私帰る」


 くるりと方向を変え、来た道を戻る祥花を追い、奏多は腕を取る。
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