未来ーサキーの見えない明日までも。
「いいからついて来い」


 物凄い剣幕で、いつも以上に低く不機嫌な声でそう告げる奏多に圧され、祥花は渋々奏多に従う。


「何でそんな怖い顔してんのさ」

「普通だろ」

「普通じゃないよ」


 擦れ違う人と人の間をするりと抜けながらそそくさと歩いて行く奏多とは引き換えに、行き様に人とぶつかりまくる祥花。

 奏多は前だけしか見ておらず、そんな困っている祥花に気づかない。


 ふわふわと粉雪が舞う中、二人の距離は次第に開いていく。


「えっ。ちょ、奏多!」


 祥花の戸惑った声に、奏多は我に返って振り返る。すると、すぐ真後ろにいたはずの祥花は何メートルも後ろにいた。

 奏多は驚き半面に祥花の方へ近寄る。


「何でお前そんな後ろにいんの」

「混んでんじゃん!」


 確かに、いつもは人通りもさほど多くはない商店街は、クリスマスである為に買い物客で賑わっている。


「……ほんと不器用だよな」


 呆れたように呟いた奏多をキッと睨みつける祥花。


「私の器用さ全部アンタが持ってったのよ!!」


 妙に説得力のある科白に、奏多はなるほどと納得した。


「もうほんっと最低! いきなり出るって連れ出されて、挙げ句の果ては文句ですか?!」

「……悪かった」

「何でいっつもいっつも意地悪ばっかりなの? 姉にはもっと優しくしなさいよ!」

「ハイ」


 ここで機嫌を損ねたら更に怒って帰ってしまう。ゴールを目前にしてそれだけは避けたい奏多は素直に祥花の言葉を受ける。

 すると祥花は拍子抜けしたかのように大人しくなった。


「な……何? ほんと怖いよ奏多。これから何があるの」

「行くぞ」


 さっきのように距離が開かないように祥花の手首を掴み、奏多は大股に歩き出す。


「えっ? ちょ…!」


 相変わらず、奏多に振り回される祥花。無駄な抵抗をやめ、導かれるままに先を進む。

 すると見えて来る、噴水広場。冬である為に水は噴いていないし、張られてもいない。
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