未来ーサキーの見えない明日までも。
「原」

「あ、奏多先輩!……さ、祥花先輩…」


 奏多が田原を見つけ声をかけると、田原は祥花の姿を見つけて顔を真っ赤にした。

 そんな様子を見て、奏多はまたも乗り気が失せる。


(何なんだ、一体。何でこうも原の反応を見ているのが嫌なんだ)


 奏多は溜め息をつきそうなのを抑え、原に近づいた。


「こっ、こんにちは!!」

「えっ。あ、こんにちは」


 原の勢いに圧され、祥花はたじろぐ。それから救いを求めるように奏多を見ると、奏多は祥花の腕を放して仲介する。


「こっちは同じ図書委員の二年の原」

「原康昭です! よろしくお願いします!」

「よ、よろしく」

「祥花。原が話があるらしい。聞いてやれ」

「へ? あ、え?」

「その為にここまで連れて来た」

「ちょ、奏多」

「じゃ」

「ありがとうございました!」


 深く深く頭を下げた田原を横目に、奏多は来た道を戻って行った。


「え? え? ちょ、奏多ぁ~!」


 突然、見知らぬ下級生と二人残された祥花はどうすればいいのか分からずに戸惑う。


(な、何、話って! 全っ然身に覚えがないんだけど?!)


 見知らぬ下級生からまさか告白されるとは一欠片も思わない祥花は、ビクビクしながらそうっと原を振り向く。

 祥花と目が合った原は顔を赤くして俯いた。


(な、なになになにっ?! 私何かした?!)


 原が紅潮しているのを見逃した祥花は本気で混乱し始める。


(帰っていい? 帰りたい!)


 原を置いて逃げるように帰るのは悪い。かと言って、この微妙な雰囲気に耐えられるほど祥花は大人ではなかった。


「あ、あの……祥花先輩」

「はいっ?」


 原がおどおどしながら祥花を見つめて来る。


「お茶、しませんか」

「………お茶?」

「ダメですか」


 明らかに気落ちした声に祥花は慌てて首を振る。


「か、構いません! 全然オッケーです!!」
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