未来ーサキーの見えない明日までも。
「ごめん、ありがと」


 祥花は笑顔で言い、奏多が開けようとしていた扉を開けた。


「おはよーっ!」


 元気良く挨拶をしながら教室内に入って行く祥花。一歩遅れて奏多も入る。


「あ、おはよーサヤ」

「サヤと同じクラスって超ラッキー」

「はよー」

「うぃっす」


 男女問わずたくさんの挨拶が返って来る。


「サヤの席、そこー」

「ありがとー」


 教えられた席に着く。二列目の一番後ろ、後ろの扉を開けてすぐの席だ。


“進級おめでとう!
 26 時枝祥花さん”


 そう書かれた黄色い紙がテープで貼られていた。毎年恒例のそれは、名前だけが手書きだ。


「奏多君の席もそこだよー」


 先ほどの女子が続けて言う。

 祥花が後ろを振り返ると、奏多が溜め息を吐きながら隣の席にカバンを置いた。


 奏多の机を覗き見れば、


“進級おめでとう!
 6 時枝奏多さん”


 の張り紙。祥花は驚いた様子で奏多を見る。


「奏多、知ってたんなら言ってよ!」

「言ったらお前やたら喜ぶだろ」

「だって隣同士なんて初めてじゃん!」


 小学校の時は三回同じクラスに割り振りされたが、隣同士になる事はなかった。


「お前煩いから」

「何をぅ?! それが姉に言う言葉か!」

「ハッ」

「くぅぅぅっ! 今鼻で笑ったね?! 信っじらんない!」


 隣同士で言い合っている双子に近寄る一人の影。

 ポンと肩に手を置かれた両者は同時に振り返る。


「トシ君!」

「おはよう、サヤ、奏多」

「おはよう! 同じクラス、よろしく!」

「こちらこそ」


 克利はにっこりと笑う。角刈りで柔道部の彼は、女子からかなりの人気がある。しかし硬派な彼は、誰とも付き合う事はしない。

 祥花はそんな、部活一筋の克利が友達として誇らしかった。


「サヤー、こっちおいでよ。話そ?」

「あ、うん!」


 カタンと席を立ち窓側にいる彼女達の方へと祥花は駆けて行った。
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