未来ーサキーの見えない明日までも。
「あの時からずっと祥花先輩が好きでした」

「原君──?」

「クリスマスプレゼント、受け取って下さい」


 祥花はごくりと唾を呑む。

 人生初の、ちゃんとした告白だった。里田にした事も里田からされた事もあるが、面と向かって告白らしい告白を受けたのは初めてだ。


 どう答えればいいのか迷う。


「フラれるのは分かってます。でも、プレゼントだけは受け取って下さい」

「う……受け取れないよ。だって私、」

「初めて女性に用意したんです。受け取って下さい、祥花先輩」


 そこまで言われては何も言えなかった。どんな思いで原がそのプレゼントを準備したのか、祥花には想像出来たからだ。


「ありがとう。好きになってくれて。プレゼントも」

「いいえ。あの時はありがとうございました。嬉しかったんです、俺」


 原はフラれたというのにスッキリした笑顔で、祥花はほっとしたように微笑を浮かべていた。

 そう言ってもらえるとありがたい。気まずさに困る事はないからだ。


「昭華、だそうですね」

「一応はね。落ちたら二次で御崎受ける」

「頑張って下さいね。俺も昭華目指してますから」

「そうなの?」

「はい。大好きな奏多先輩と祥花先輩が行く所ですよ? 追いかけます!」


 そんな不純な動機で志望していいのだろうかと祥花は思いながらも口にしない。

 意思が強そうなのは見て分かる。


「俺、祥花先輩の事諦めませんから」

「えっ」

「個人の自由でしょう?」


 屈託がない笑顔で問いかけて来る原。祥花は脱力感に襲われた。


(この子…強い…)


 祥花は引き攣り笑いを浮かべ、珈琲を啜った。


 窓の外を見やれば、ふわふわと粉雪が降り続けていた。

 ホワイトクリスマスだなぁと心中で呟きながら、戸惑う自分を残してそそくさと帰宅してしまった残忍な弟の事を思っていた。





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