未来ーサキーの見えない明日までも。
 奏多はニヤリと笑い、祥花は真っ青になる。


「か……奏多のバカー! 知ってて言わせたんでしょ?! 最っ低!」

「ははははは」

「そのふざけた笑いやめてっ! 気分悪い! ぅあ~高校落ちちゃう~っ」


 本気でショックを受けている素直な祥花に、少しからかいすぎたかなと反省する奏多は合格祈願のお守りを購入する。

 赤か青か訊かずに、祥花は赤のお守りを奏多から手渡された。


「合格祈願…?」

「合格するしないはお前次第だろ。今の内頑張っときゃ何とかなる」


 素直に“お前なら大丈夫だ”と言えないところが奏多らしい。

 祥花はお守りを見つめ、嬉しそうな恥ずかしそうな顔をして笑った。その笑顔に奏多も一安心する。


「あ、もう一つ合格祈願のお守り下さい。そっちの青色の」


 祥花がもう一つ色違いのお守りを買うのを、奏多は不思議がって見ている。


「はい。奏多には必要ないと思うけど、お礼に」


 祥花は購入したばかりのお守りを奏多に差し出した。

 奏多は驚いた顔をして、小さく礼を言いながらそれを受け取った。

 祥花はにこにこ笑いながらお守りを見つめている。そんな姿が愛らしく、奏多の口許が緩む。


 祥花が好きだと自覚してから早六日。自覚した以外の何かが変わる事もなく過ごしている。

 何かが変わって欲しい事も起きて欲しい訳でもない奏多はそれに満足している。


 今まで通り、それは奏多自身も望む事。


 奏多が今一番恐れているのは、祥花が自分から離れてゆく事だ。だからこそこの、平々凡々な毎日がいとおしい。


「小吉かぁー」


 おみくじを引いて祥花は複雑な表情を浮かべていた。奏多は無表情で見つめている。


(お? さては悪かったな)


 凶が出ていたりしてとムフフと笑いながら奏多のおみくじを覗き込む。


「はぅあ!! 大吉ぃ?!」

「煩い」

「何で大吉なのさ!」

「日頃の行いの良さだろ」

「うっ。私そんな悪い事してないから!」

「思ってるのは自分だけで、実際はそうじゃねぇのかもな」
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