ショータロー☆コンプレックス
荷物置き場兼、休憩所として利用させてもらっていたロケバスに戻り、マッハで着替えを済ませると、周りへの挨拶もそこそこにバスを出て、駐車場内を移動する。


なぜなら今日はこの後、同じ劇団員の瑠美ちゃんと、二人きりで食事を共にする約束をしているから。


レンタカーにてプチドライブを楽しんだあと、夜景の見えるレストランに行く予定。


「なぁ」


サプライズとして、瑠美ちゃんへのちょっとしたプレゼントも用意している。


いつも仲間達と行く居酒屋での飲み会とは異なる、ムーディーでロマンチックな大人の夜を楽しむのだ。


「なぁってば!」


今日のギャラは手渡しだったから、元々ある程度は用意してあったけど、さらに懐が暖かくなったもんね。


バイトの後ってのがちょっと忙しないけど、お互いに今晩しか都合がつかなかったのだからそこは仕方がない。


ていうか、瑠美ちゃんには前々からさりげなくアプローチをしかけて来て、今回ようやくお食事会までたどり着けたのだから、このチャンスを潰すワケには「お前だよ緑!無視すんじゃねーよ!」


「……え?」


うかれ気分で車に近づき、ドアのロックを解除しようとしていたオレは、その時初めて背後からの声に気が付いた。


振り向くと、超不機嫌な顔をした若い男が、小走りにこちらに向かって来る所だった。
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