星に願いを
「ねぇ、先生!」







誰かが声をあげた。








「ん?」










「先生、質問!」







その声をを皮切りに
みんなはわいわい騒ぎだす。







先生、かっこいいね。
なんて言っている子もいる。

たしかに、かっこいいとは思う。







「先生、担当教科は?」




「先生、彼女はいる?」










みんなが、ぽんぽん質問するもんだから
先生は、呆れ顔で耳を塞ぎつつ

俺が高校生の頃、こんなにうるさかったっけな…

と呟いた後、ゆっくり口を開いた。












「えーっと、彼女の質問は無視するとして」










えーっ、とブーイング。










「担当教科は、国語、英語。
あー…あと、音楽。
でも、君ら三年生に教えるのは英語だけだから。そこんところ、よろしく」


















と、また耳を触った。
どうやら、この人は耳を触るのが癖らしい。












「先生に音楽教えてもらいたかったな」






「っつっても、豊田先生が英語の先生だったんだからさ。
しょうがないでしょ」





「先生!」



「おう」


「なんで先生になろうと思ったの?」






そんな質問に

急に、先生の表情が曇った。…気がした。













「うーん…。先生になった、理由…。
本当のこと、言ったら、みんな…引く、かも」









と、わりと真剣に言った先生に対し、
なにも気を遣えないアホな男子たちは、無神経なことに









「え、もしかして、そんないやらしい理由?」



なんてニヤニヤしながら騒ぎ出す。






「女子の水着目当てとか?」







男子の超失礼な質問に







「そうそう、あえてのスク水がね、かわいくて…
って、そんなわけあるかっての」







と、見事なノリ突込み。










男子も、女子も

先生も、私も



気が付けば笑っていた。










その容姿から、女子のハートを
そのノリの良さや、面白さから、男子のハートをすっかり奪ってしまった先生が
この学校の人気者になるのに、そう時間はかからないだろう。












…でも

私は、一つだけ引っかかっていることがあった。




どうして、先生は

生徒の、他愛ない質問に
あんなに哀しそうな顔をしたんだろう…
< 5 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop