星に願いを

「えっ?」



まさかこの人
生徒の名前、覚えてないのか…?



「先生…赴任してから何日断ってると思ってるんですか…」



「えー?何日だっけねぇ?」



「2週間ですよ。いい加減、覚えましょうよ」


「っつってもねぇ…」


自分の椅子に座って、だらーっと背もたれにもたれた。



「ごめんね、どこかのドラマの熱血教師なら、もう生徒の顔と名前、把握してるんだろうけどさ。
俺、人の顔と名前、覚えるの苦手なんだよね」


「それ、教師として大丈夫ですか」


「な、それは思うわ」


真顔で淡々と言うものだから、


「ぷっ…それ、自分で言っちゃうんですか…」



可笑しくて可笑しくて
お腹を抱えて笑ってしまった。


「え、今のそんなに笑う!?」


「ひぃ…面白い…」


面白すぎて、涙が出た。


「だって先生、やばいですよ。生徒の顔と名前、覚えられないなんて」


私がまだ笑いながら言うものだから
先生は少しいじけた声で言った。


「嘘だよ」


「いやー、面白い」


「冗談だってば」


「なんで"人の顔と名前覚えるのが苦手"って
冗談言う必要あるんですか」


「それは本当だけど…」


「ほらやっぱり」


やっぱりこの人は
教師に向いていない人なんだ。
不適合者。














「お前の名前がわかんないっていうのが嘘」
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