え、高嶺の花が僕の彼女⁉︎
少しだけ、息を飲んだ。
入ってきた奴にも気づかれないくらい、小さく。


勢いよく教室の扉を開けたのは矢野春華だった。

走ったのか、セミロングの黒髪が少し乱れていた。


「……裕くん。佐々木麻里見てない?」



「佐々木麻里?どんな子?」

まだ入学してからの時間は浅く、僕は他のクラスの女子の名前なんて把握してなかった。

「ショートカットでー、肌白くてー、身長高い子!」

「見てないと思う。」


「麻里、帰っちゃったかなー…先生が急に仕事押し付けるんだもん。裕くんは自習?」

「いや、残された。」


「ハハ。頑張れー。じゃあね!」


ガラガラ、ピシャッ



パタパタ…





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