え、高嶺の花が僕の彼女⁉︎

なんて思った僕は愚かだった。


それに気づいたのは玄関を通過し、教室に向かう途中でのことだ。



「ねぇ、なんか、裕、見られてない？」

萩野がポソリと呟く。


「……。」


殺気。

さっきから、チクチクと僕の背中に刺さるのは男子たちからの殺気だった。


廊下を歩くだけで、ここまで肩身が狭いのは初めてだ。


バンッ

「……うっ。」

いきなり背中を叩かれて息が詰まった。

「よー、裕！お前、矢野春華拉致ったって本当？」