依頼屋



「これと、後はこれだな」



そう言って出したのは漆黒のカラーコンタクトとウィッグ


「女装は最近あまりしないからな…これは使えるか分からんな…」


彼は長くてストレートのウィッグをとかしながら言った


「まぁやってみるか」




そう言うと彼は慣れた手つきで私の髪を編み込んでいく


こうされていると懐かしい感覚がして心地よい


いつも舞台の前はよくこうやって髪をいじられてたっけ…



「よし、完璧だ

さあ、早くコンタクトをつけろ行くぞ」


「うん、ちょっと待って」



私は急いでコンタクトをはめて


もう定位置になってしまった彼の左隣へ走った





ストレートの髪から彼の匂いがする



これをつけた彼はきっと美人だろう



私なんかよりずっと綺麗に違いない







「宿は行く前にとっておいた」



「ありがとう…」



私は彼に甘えてばかりだ



ふと昔に戻った気分になるが



彼にとって私は単なる利用する道具であることを忘れてはいけない





彼は私がどれだけ手を伸ばしても届かない



遠い遠い存在になってしまったのだ



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