ねぇ、どうして君は【Second】
「俺も手伝うよ」
「貸して」と資料をヒョイと取られ、彼は自分のデスクに座った。
「い、いいですよ!主任は上がってください」
いくら同い年とはいえ、上司は上司だ。
こんな私が任された仕事を、手伝ってもらうわけにはいかない。
「俺が1人桜を残して帰れると思う?」
「……ッ!」
サラッと私の呼び方を変えて彼は言う。
“桜”
異動初日に一度呼ばれて以来、初めて呼ばれた。
「俺、少しはフランス語できるから任せてよ」
「ね?」と完璧な笑顔で言われて、私はもう断れなかった。
「はぁ〜。終わったぁ〜…!」
結局、終わったのは深夜0時過ぎ。
彼が手伝ってくれなかったら、きっと2時までかかっていただろう。