空色スカイ
目指す夢
俺が目指してきたのは‥
“お笑い芸人”
―高校1年・夏―
「あ~……暑い…」
ジリジリと火が照り着くなか、
俺は運命的な出遭いをした。
「かあちゃ~ん……
アイスこうてきてや~」
「本当にお前は…
阿呆やなあ…
そんな事言うんは勉強してからにしぃや。」
水が流れる音と共に、
食器を置く音が鳴る。
いつもはうるさく感じる音も、
夏は気持ち良く聞こえる。
「あー…
そうや純っ!」
「んあ゙~?」
パタパタと台所から母ちゃんが俺の寝転んでいる庭のベンチまでくる。
「はあ~…
もう本間にお前は汚いなあ!
あんたねぇ、勉強せん言うけど困るんは自分やで?
将来どんな仕事しようと思ってるん?」
「母ちゃんに関係ないやろ~…」
「言うたら、アイスこうてきてあげるで。」
「……本間に?」
「うん。」
「…人」
「んあ?」
「……芸人…」
「阿呆ちゃうの。
あんたの漫才見ても誰も笑わん。
アイスこうてきちゃらーん。」
母ちゃんはヒラヒラと手に持った1000円札をなびかせながら台所に戻って行く。
「なんやねん。
本間って言うたやんか~」
「そんな芸人目指してる無謀な夢もってる息子に育てた覚えはない。」
「母ちゃんこそ阿呆や……」
「なに。
なんか言うたか?」
「な~んにも……」
俺は顔に団扇を置いて寝る体勢に入った。