【短編】七夕奇譚
「エピローグ」
「……で、つまりは小関さんが犯人だったんですかぁ?
キャハハハ、な〜〜〜んだ、ビックリして損しちゃった!」
結局、サキはロッカーで私が来るのを待っていた。
私の「報告」に、くりくりとよく動く目を輝かせながら笑っている。
「けど、…………センパイ?
207号室の扉開ける時………結構ドキドキしませんでしたぁ?」
イタズラな目とニヤけた口元で聞いてくるサキに、私は返事が出来なかった。
「……う、うるさいわね……っ」
「あ、やっぱ、ちょっと怖かったんですね〜〜?」
「………あ、アンタに言われたか無いわよっ!」
そんな他愛も無い話をしているうちに、私たちは正面玄関を抜け、病院の外へと出た。
ちょうどその時、月を覆っていた雲が切れ、月明かりが辺り一面を照らしはじめた。
「うわぁ…………。
センパイ!ほらほらっ!」
上空を指差すサキ。
空には、月に照らされた幻想的な天の川が、巨大な羽衣のように夜空を舞っていた。
私は、その美しい光景にしばらく心を奪われ、無意識のうちにその言葉を発していた。
「今頃、田畑さんは、どこでこの天の川を見ているんでしょうね………。」
「そうですねぇ………。」
そう言ったサキが、何気なく病院の方を振り返る。
……………と、
サキは、その体勢のまま、音もなく地面にペタンと座り込んでしまった。
「……え?……どしたの?」
サキのいきなりの行動の意味が分からない私。
さらに、サキのホットパンツが見る見るうちに尿で濡れていく。
「……さ………サキ………?
ねぇ、ちょっと………!」
私は、サキの肩をつかんで揺すってみたが、その目は病院の方を見つめたままで動かない。
そして、その口は、
「……なさい………ごえんあさいぃ………」
うわごとのように「ごめんなさい」をつぶやいていた……。
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