【短編】七夕奇譚
「…………そ、そうですよねっ!そんな事、あるワケないですよねっ!」
やっとひとりで立てるようになったサキが、長瀬さんの言葉に全身全霊で納得している。
……実は、私も、バカげてると思いながらも、心のどこかにその不安がこびりついていたのだった。
けど、長瀬さんのおかげで、その不安も軽くなった。
「……さぁ、話はおしまい!アンタたち、明日もあるんだから、田町さんの事は気にせずにもうアガりなさい。
こういう場合はね、明るくなってから探すと呆気なく見つかるものなの。だから、とっとと帰って寝なさい!いいわね!」
「はい。」
「は、はいっ!」
「うむ、ヨロシイ。」
長瀬さんは私たちの返事にニッコリ微笑んで、ナースステーションへと帰っていった。
お役御免となった私たちも、本来ならば真っ直ぐ帰るべきなのだろう。
……しかし、私は………。
「サキ。私ちょっともう一箇所だけ確認してくるから。」
「………え、えぇぇっ?!」
この陰鬱な任務から解放されてホッとしていたサキが、驚きの声をあげた。
「アンタは先帰ってなさい!」
そう言い残すと私は、再度床の水あとを追いかけて歩き始めた……。
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