俺様王子は子猫がお好き
「すまなかった」
俺は大下をしっかり見つめてそう言った。
「あっ、いえ私こそ…あのっ…」
「それと」
俺は大下に向かって……
「りゅ、龍様?!」
深く、頭を下げた。
「いつもありがとう」
人に心から礼を言ったのは初めての経験だった。
ましてや頭を下げるなんてなおさら。
たぶん…結菜と出会ってなければ一生こんなことしてなかったな。
「玄野くん、よくできました~!」
顔を上げると、結菜の満面の笑みとぶつかった。
「……っ」
大きな猫目はくしゃっと三日月形で八重歯がのぞいていて……
上手く言えないけど、それは何だか子供っぽいというか飾っていないそのままの笑顔というか……
「どしたの?」
不思議そうに尋ねられ、まさか見とれていたなんて答えるわけにもいかず適当にごまかす。
そして俺は気づいたんだ…
───結菜が初めて俺の前で、俺に向かって笑ってくれたということに。