キミと音を奏でる
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‥‥
寒空の下で小夏は鼻唄を奏でる。
それは優しい唄
痛みを知ってる唄
あったかい唄
ラジオからこの曲が流れた瞬間
小夏の開いたノートにはうすい点々が広がった。
すぐに歌詞を調べてノートに書き込む。
自分が不幸だと思ったことはない。家族もいる。友達もいる。あったかいご飯がある。ほかほかのお風呂にも入れる。
それなのに、ぽっかりと空いたような、雨にあたってるような、そんな言い表せないものを抱えている。
そんなときに出会った歌詞が自分をそのまま表現してくれている気がした。
‥‥‥
世界に誰もいない気がした夜があって
自分がいない気分に浸った朝があって
‥‥‥
それから小夏は音楽にのめり込むようになった。なんとなく自分の表現場所はココだと感じた。