【短】ユルサナイカラ
ユルサナイカラ

Please forgive me.

「んっ……」


夜中、何故か目が覚める。

正確に言うと目は覚めたが、眠たくて目があかない。



なんでだろ……いつもは朝までぐっすり眠れるのに。





カチンーーー






ドアの向こうの廊下で何か落ちるような音がした。




カサッ……カチン…カチン……カサッ




耳を澄ますと、布の擦れる音と、何か硬いものが地面に当たる音。



「お母さん?」


そう声をだそうとしたが、口が動かない。

目を開けようとしても開かない。



カサッ……カチャン…カチャン…カサッ……



私に入ってくる情報は、どんどん近くなってくるこの音だけ。


カサッ……カチン…カチン…カサッ……


どんどん大きくなる音。




「怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い」
そんな感情がだけが脳を侵食していく。




カサッ…カチン…カチッ



突然その音が止まった。



カチャン…


きぃぃー……




ドアが開く音が聞こえたと思うと






ーーーードサッ






体中に走る重み。





それと同時にずっと開かなかった目がぱっと開いた。




「ーーーっぁっ、あぁっ」



その先の光景を見たせいで声にならない声が出る。



だって…だって、目をあけたら…







鼻が触れるくらいの距離に、にたぁ…と笑った血まみれの女の顔があったから。



その女は片眼がなく、本来あるべき場所には、ずっとずっと深い赤黒い闇が続いていた。





目を逸らしたいのに吸い込まれるようにその闇から目が離せない。




なんでだろ…この女の人、どこかで見た気が………


あ!もしかしてあの、捨てた人形!?






「あっ、あの時はっーーー」


なんとか声を出し、あの時のことを謝ろうとする。





ぴちゃん


私の頬になにか落ちた。




ぴちゃん…ぴちゃん……



生あたたかい何か。




そおっ……と手で頬っぺたを拭う





手にべっとりと赤黒い何かがつく。





もう一度、女の顔を見ると、それは女の目の闇から落ちてくるどす黒い血液だった。





女はどんどん顔を近づける。




「い、いやぁ…やめて…こ、来ないでっ…

私がっ!私が悪かったんだから!」





すると、女がさらに顔を歪ませて笑い、









「もう遅い」








「うっ…」


突然の腹部の鈍い痛み。





「死んじゃえ」







薄れてゆく意識の中、懐かしいB香の香りを感じた。












つぎの日発見されたA子は腹部を大きく引き裂かれ、目を深く抉られていたそうだ。



そう、あの人形のように。




凄惨なA子だった死体の隣にはあの人形が置かれていたとかなんとか。
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