今宵、月が愛でる物語
「はぁはぁはぁはぁ…っ!……はぁ。」

心がはやるままに息を切らして辿り着いたのは街のはずれにある高台の公園だ。

吹く風はこの季節らしくまだ冷たい。

「…さむっ!」

厚めのパーカーを羽織ってきたけれどマフラーも必要だったことを後悔しつつ足を進める。

目指すのは街並みが一望できる開けた広場。人気のない歩道を、高鳴って煩い胸を押さえつけながら歩いていると次第にその場所は見えてきた。

「わ、キレイ………。」

闇に浮かぶ月は堂々と輝き私を照らす。



でも…………



そこに、会いたい人の姿は見当たらない。


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