今宵、月が愛でる物語
ふと、温もりが離れる。

私はどんな顔をしてるだろう?

奏一の気持ちなんて考えたことなかった。

幼馴染だから……なんでもわかるんだって勝手に納得して…。

「美文。」

「…っ。は…い。」

まっすぐな視線。

切なく苦しそうで…それでいて、いつになく真剣な瞳。


こんな顔、するんだ…。


「美文…。

好きだよ。

ずっとずーっと、美文を見てきた。

…いきなり好きになれとは言わない。

だけど…。

チャンスをちょうだい。

美文の心を俺のものにするチャンスを。」

「……チャンスを?」

揺れた瞳に私が映る。

「そう。今日は駿さんのせいで泣いてる顔の美文だけど。

絶対俺が、ずっと笑顔でいられるようにするから。」

「笑顔…。」

「うん。だから…

チャンスをちょうだい。」

再び頬に添えられる掌。

「…………………」

そんな風に私を想ってくれていたなんて。



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