今宵、月が愛でる物語
…キレイだな。

ほんのり淡く縁取られた月は半月と満月のちょうど中間で、浮かび上がるグレーの文様は幻想的でいて揺るぎなく不変だ。

誰が見たってキレイ。


でも。


それはまるで……、

私たちの関係だ。

告白することもされることもなく、恋人とは言えない満月より満たされない中途半端な距離。

淡くぼんやりした様は、いつでも脆く消えてしまいそうな不安定な関係。

浮かんでいる文様は、愛しさと不安が入り混じったまだら模様の私の心だ。

いつでも……この人を想ってしまってから変わらない愛しい気持ちが、切なく空に磔にされている。


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