今宵、月が愛でる物語
ひとまわりも年上の千景さんにこの社長室で初めて抱かれてから3年が経った。

夜遅く、一緒に他社に出向いた帰りに雨に打たれて冷えた身体を温めようとしていた時のことだった。

濡れて透けたシャツ、ゆるいパーマがかった髪から滴る雫、私の身体を強く引き寄せる腕の温もり。


『お前、俺が欲しいんだろ』


隠していた想いをいとも簡単に暴いて磔にしたその低く甘い響きに…その時、まるで小娘だった私が抗うなんてできなかった。


< 126 / 136 >

この作品をシェア

pagetop