今宵、月が愛でる物語
「葵、手がお留守だろ?」

そう言って千景さんはいつものように、自分のシャツを私に脱がせるよう促す。

「…ん、………あ………っ!」

「………よくできました。

ご褒美、欲しいだろ?」

袖を抜いた右手の指先を私の唇に這わせたかと思うと、そのまま弄ぶように歯列の奥に侵入させ強引に口を開かされてしまう。


あとはもう、


されるがまま。


一気に身体中を火照らされて、


貪られて、


天に昇るような、


地に堕ちるような、


快楽へと引き摺りこまれる。


『ただのお遊びの相手』


それでもいいとすら思ってしまう、死ぬほどの快感で全身を満たされて。


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