今宵、月が愛でる物語
私たちの身長差はヒールを履いていても20センチある。つまり、私はスッポリと包まれてしまう。

「あ…の、課長っ!」


触れてしまう彼の胸と私の肩。


鼻を擽る大人の男性の色香。


………ドキドキしてしまう。


やだ、想いはとうに封印したのに。

「…お前さ、ホントによく頑張るよな。絶対弱音吐かないし、妥協しないし、男も負かすし、その辺の女みたいに可愛げないし…。」

「………ケンカ売りたいんでしょうか。

でも、そういう性格なので仕方ないです。」

「…だろうな。だけど………

俺は、そういうとこ好きだよ。」


……………今、なんて。


思わぬ言葉に胸が高鳴る。

密着してる彼から香るほのかなコロンも私を動揺させる。

「入社して来た時からずっとお前を見てた。ひとり必死に仕事に取り組むお前を見てたらもっと惹かれて…目が離せなくなった。


本気だよ。…本気なんだ。


……俺の特別な女になって欲しい。」



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