今宵、月が愛でる物語
耳元で囁くように伝えられる気持ちがまっすぐに刺さってくる。


封印したはずの気持ちが疼く。


「でも…私はきっと、いや絶対…可愛くなれないです。

前の彼氏も泣かせた挙句、振られてます。

そんな女は貴方に相応しくない……っ!」

クルリと後ろを向かされ、まっすぐに見つめられる。

その顔は……柔らかく、でも自信に満ちた笑顔を浮かべていて、私の心の封印をいとも簡単にはらりと解いてしまう。

「そんな風に思う?

俺がお前を選ぶって言ってるの。俺、いくらお前が強くてもそれ以上の包容力あるよ?


…早瀬晶。


逃がさないって言ったらどうする?」

「……………」


逃がさないなんて………


そんな風に言われたら、逃げられないに決まってる。


自由だった両手すら、もう彼の手中にある。



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