今宵、月が愛でる物語
目一杯去勢を張って押し込めていたはずの気持ちはもうはち切れそうに膨らんでいて、潤む瞳から流れ落ちそうだった。

「あ…の、課長。」

「…何?」

「私、泣きそう…です。」

「…うん。知ってる。理由は?」

「…………」

「言って?聞きたい。」

「…………」

「大丈夫。言って?」

まるで私の言葉をわかっているかのように………、優しく優しくその先を誘導していく。

「…っ!……す、き、だから…」

「………うん。」

堪えきれず、頬を伝う雫。顔はきっともう赤く染まってる。

「私も課長が…好き、だから。」

握られている手に私も力を込めて握り返す。

私のどこにこんなに女の子らしい自分が隠れていたのか。



………………あれ?



俯き、耳を赤く染める課長。

「あの?」

「………あのさ、」

「はい?」

目線を合わせて、また見つめられる。

「十分…可愛いよ。」

「……っ!」

ドクリと心臓が鳴るのと同時にキスが降ってくる。

甘く優しく、それでいてどこか攻撃的な、心が震えるほどのキス。

「…っ。はぁ…。課長っ…」

「いや、今は違うよ。亮太。

…呼んで、晶?」

「…………亮太さ、んっ。

…好きです。とってもとっても、大好きです。」



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