今宵、月が愛でる物語
月明かりを感じて泣き顔のまま見上げた空には、いつもよりひときわ大きく明るく輝くその姿があった。

「…スーパームーン………。」

そう呼ばれる今夜の月。

吸い込まれるように美しく、凛としていて…恋に破れてボロボロの私とは大違いだ。


駿ちゃんも…見てるかな。


だけどその隣には、きっと、奥さんがいる。

「…っ。ふ…ぅっ。」

13年も想い続けたのに届かなかったこの気持ちは今日でおしまいにしよう。

月を見上げたまま呟く。


「バイバイ。駿ちゃん…。」


止まらない涙は、心にこびりついた彼の面影を流すためのものだ。



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