今宵、月が愛でる物語
覆いかぶさっていた体を起こし、私も起こすと同時に胸に抱き寄せる彼。

もう一度、深い溜息で私を包む。

「……もっと早く助けに……いや、違うな。俺が沙良を迎えに行けばよかった。

いくら社内とはいえ、女に一人歩きさせるなんて。

ごめんな。怖い思いさせて。」

髪を撫でながらそう言った彼に私は、
ふるふると頭を振って返事する。

「…いえ。私も不用心でした。

それに、あと少し遅かったら私きっともっと大変なことになってました。

…助けてくれてありがとうございます。

…響也さん……。大好きです。」



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