今宵、月が愛でる物語
「…っ!」

一瞬にして、その唇を奪う。


腰を抱き、頭を支え、動きを封じて。



優しく、穏やかに。



艶かしく、艶やかに。



舐め上げるように、喰むように。



貪るように、絡め取るように。



「んっ…!……はぁ、……っ、冬汰…!」

僕に翻弄されて切なげに艶めく声をあげ、

僕の腕をギュッと掴み、

逃れようと身をよじる菫は……

赤く染まった頬も、潤んだ瞳も、薄く開かれた唇も、

全てが愛おしかった。



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