インフィニティ(仮)
僕の右手につけたままのグローブ。
グローブの甲についていた大きな石は最初見たときより赤みがかかっている気がした。
「…お前は弥生の魂に選ばれた。弥生が死ぬ事によってお前の中の自分が強くなる。」
…弥生が死ぬ。
……死んだんだ。弥生…。
胸ぐらを掴んだまま涙が流れ…
その手はいっそう力強くなった。
「だから…?何?だからなんなんだよっ!」
父さんは僕の腕を軽く払いのけた。
「戦うのが嫌ならグローブを外して家に帰れ。役立たずは用無しだ。」
それだけ言うと背を向けて病室を出ていった。
「待って!待ってよ父さん!!」
声は届くことなくむなしく消えていった。
閉じるドアの音。
訪れた静寂。
「恭。」
左横にいた浩平君がしゃべりかけてきた。
「…起きてたんだ」
「…弥生ちゃん死んだんだね。」
「……うん。」
なんとなく右手をさすった。
「…でも死んだのは肉体だけだ。」
意味が分からないことを浩平君は言い出した。