幼なじみ
部屋に帰ってきていつものように窓を開けた


「「あっ…」」


重なる声

凪沙が窓辺で本を読んでいた


「おかえり。乃愛。」


「ただいま。」


この挨拶も日課


私はタバコに火をつけた


「もう、やめたら?タバコ。体によくないよ?」


凪沙が珍しくタバコを注意する

今までこんなことなかったのに


「やめなれない止まらない♪」

どこかのCMソングを歌う私に凪沙は飽きれ顔


ちぇ…
なんか突っ込んでよ


「あ…―今日さぁ、ラブレターもらった。」


「えっ…!」


私の言葉に顔をあげる凪沙
「私だってモテるんだぞ。」

ちょっと脚色する


「…そう。よかったね。」


素っ気ない反応


なんだよ…
気にしないんだぁ


なんて
落ち込んでる自分が嫌になる


「相手はね、サッカー部の超かっこいい先輩なんだぁ!デート誘われた。」


これは本当


チケットをもらったときに二人で行く約束をした


だって
私一人だけ行くのは気が引けたから


「そうなんだ…。
よかったね。彼氏ができて。」


そう言って本を読み出す凪沙は無表情


ズキッ


胸に痛みが走った



「ねぇ、凪沙は…私に彼氏ができたら嬉しい?」



凪沙は本から視線を離さない


「乃愛が幸せなら俺は嬉しいよ。」


そっか―…



言葉が出てこなかった


一番近くにいた存在が
一番大きい事にやっと気が付いたのに


「俺も今日…告白された女の子と付き合うことにした。」



その言葉は
致命的だった


唇が震える

彼女いらないって言ってたじゃん


私のノクターンが一番好きって言ってくれた

あの笑顔が
こんなにも遠く感じる


「そっか…―
じゃお互いに幸せになろうね!じゃね。」


笑顔を残して
窓を閉めた



もう
この窓を開けることは無いのかな
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