ハナミツ





「花の香り、香水じゃないですよね。」



「香水?では…………ないでふ。」



鼻をすすって顔を上げようとするけど、
顔があげられない。



綾瀬さんが抱きしめるみたいに頭から
手を離してくれなかったから。

心臓がドキドキし出す。



「あ、あの。大丈夫ですから。手を……
離して下さい。涙は止まりました。
……鼻水も、」



「………。」



「あの。大丈夫です、綾瀬さん?」


………… ?

私は目をつむり少し黙った。

ゆっくり心臓の音がする。


綾瀬さんは少し早い。呼吸する音が微かに聞こえる。
< 102 / 668 >

この作品をシェア

pagetop