ハナミツ
七瀬さんは、わざわざ店に送り届けてくれた。
「おかえり。あの男になんか言われた?大丈夫?」
店長は開口一番に聞いてくれた。
裏口から帰って来たら店長が、構えていたように来てくれた。
店内からは美咲の明るい声がした。
お客さんが来てるのだ。
「大丈夫ですよ。」
「あのさ、…もしかして綾瀬って人の事?…
あたしも七瀬からちょっとしか聞いてないから分かんないけど。
…その綾瀬って声優、いいやつなの?」
いいやつ。
「きっといい人です…店長すみません。黙っていて、こんな形でお話することになってしまって……。」
店長は別にいいわよ。と言った。
「……七瀬はね、意地悪だけど根っこはいい奴だから、
例え藤ノ宮からしたら嫌なことでも、
藤ノ宮が嫌いで言ってるんじゃないのよ。
なんつーか、まぁああいう業界にいたらああなっちゃうのかもね。
なんか、変に捻れるっていうか。しがらみでがんじがらめになっちゃう、っていうか。私は知らないけど。」
きっぱりと言い切りじゃあ、
また仕事よろしくと店長は2階に行った。
店長のああいうきっぱりしてるとこ、好きだと思う。
迷いがなくて清々しい。