ハナミツ
事情。
まだ母親のことが整理できない事情。
たまに見せる淋しそうな表情は、そのせいなの
だろうかー。
「………。」
ー優しいから、
あなたに心配をかけさせたくなかったんでしょう。
心配……。
「………、俺をいくつだと思ってんだよ……」
心配をかけさせなくないのは分かる。
分かるけど。
「『次は月見ヶ丘~月見ヶ丘、お降りのお客様はお出口、左側になります。』」
頭に入ってこない。キャラソンを切り、
イヤホンを外した
降りる駅だ。
荷物を片付け出口付近に立つ準備をした。
藤ノ宮さんは、何を隠している?
一見明るさと思っていた彼女の、事情。
ー彼女を大事にするつもりがあるなら……。
少なくとも、結城さんは知っているのだ。
なにがあったのか。
そんなに、俺に言いたくない事なのか?