ハナミツ







「……でも。」



「俺のことを気にしてくれているんですか?芸能人だから、……って。」



「………。はい」



小さい声だった。




下手したらワイパーの方が音が大きくて
聞き取れないくらいだ。


「…マズイんだろーけどなぁ。藤ノ宮さんこそ、すいません。俺が強引に……」


「……。それは、大丈夫です…。雨ですし、綾瀬さんが言って下さった通り危ないですから。」




赤信号で止まって、ギアを入れる。
横を向いたら藤ノ宮さんは、俯いてるかと思ったら
じいと外を見ていた。



俺が見ていたのに気付いたのか、ふっとこっちを見た。

目があい、俺から先に目を逸らした。



「……何か考え事してたんですか?」

「……えと、はい。今日は綾瀬さんに会えて驚いたなぁって。あまつさえ泊まらさせて頂くなんて、……今朝は想像も出来なかったです。」



俺もそうだ。


こんなことになるなんて、思いもしなかった。


助手席には藤ノ宮さん。












< 178 / 668 >

この作品をシェア

pagetop