ハナミツ
「……でも。」
「俺のことを気にしてくれているんですか?芸能人だから、……って。」
「………。はい」
小さい声だった。
下手したらワイパーの方が音が大きくて
聞き取れないくらいだ。
「…マズイんだろーけどなぁ。藤ノ宮さんこそ、すいません。俺が強引に……」
「……。それは、大丈夫です…。雨ですし、綾瀬さんが言って下さった通り危ないですから。」
赤信号で止まって、ギアを入れる。
横を向いたら藤ノ宮さんは、俯いてるかと思ったら
じいと外を見ていた。
俺が見ていたのに気付いたのか、ふっとこっちを見た。
目があい、俺から先に目を逸らした。
「……何か考え事してたんですか?」
「……えと、はい。今日は綾瀬さんに会えて驚いたなぁって。あまつさえ泊まらさせて頂くなんて、……今朝は想像も出来なかったです。」
俺もそうだ。
こんなことになるなんて、思いもしなかった。
助手席には藤ノ宮さん。