ハナミツ
綾瀬さんは、台本無しでも台詞をスラスラこたえていた。
まるで、役が乗り移ってるみたいな。
声は綾瀬さんなのに、別の誰かが綾瀬さんの
中にいるみたいだ。
怖くて、迫力がある。
「………すごいですね。綾瀬さん。」
「……やー。正直まだまだです。…」
綾瀬さんは、ふぅと息をついた。
と、
電気が急に消えた。
「え、………停電!」
「……ありえますね。」
綾瀬さんは立ち上がって窓際によりカーテンの隙間から外を見た。
「んー。多分他の家も停電してるみたいです。やばいなぁ……、」
ざぁぁと雨が煩く聞こえる。
「……俺ちょっと確認してきます。藤ノ宮さんは家にいてください。一応スマホだけ持っていきます。」
綾瀬さんは、バタバタと上着を羽織り、玄関に向かった。
がちゃ、ばたん!