ハナミツ
返事に詰まっていたらエレベーターが来て、
綾瀬さんは私から手を離した。
「………行きましょうか。」
「はい。」
いつもの綾瀬さんに戻った。
いつもの毎日。
いつもとおなじ世界。
ただ。
差し出された左手を、私はじっと見たあと
そっと握った。
暖かくてくすぐったい。
これが幸せというなら、神様は
きっと私を試しているのかもしれない。
彼の側にいる資格がお前にはあるのか?
「…綾瀬さん。 」
「はい。」
「……。」
好き、
です。
「………。」
何も言えずに綾瀬さんを見上げ、
首をふった。
綾瀬さんは空いてる右手でグシャグシャと
私の髪をかいた。
「ちゃんと自分の気持ちが、
整った時にまた話して下さい。」
綾瀬さんは穏やかに微笑み、時計を見た。