ハナミツ
*3rd-3 tell it in your voice?
〈綾瀬目線〉
5月。
藤ノ宮さんに会って2ヶ月が過ぎた。
相変わらず寒くなったり暑くなったりしている。
こないだ藤ノ宮さんに
電話で口走った事が未だに悔やまれる。
仕事以上に考えてしまっているから、ヤバい。
「そういえば、綾瀬さんアレに出るんでしたよね。なんだっけ、"姫キス"だっけ。」
「そうそう。人魚姫にキスを。だよね、綾瀬君」
「あ、は、…はい。」
危ない危ない、自分の世界に入り込むとこだった。
まだスタジオで、収録は終わったが
次の時間まで間があるので仕事仲間で話していた。
「切ないですよね。歌うときしか声を聞けない
アンドロイドとの恋。
それを人魚姫に例える原作もいいっ!」
声優仲間の女性、菊乃さんは台本を丸め天に突き出す
ポーズでうっとりしていた。
「さすが菊乃ちゃんマンガおたくー。」