ハナミツ
「…綾瀬さん」
「友達から俺の事を知っているか
聞かれたあなたは、知らないと言ったんです。
やっぱり知らないよなぁって
声優なんてそんなものかなって……思った。
ある意味藤ノ宮さんの反応は嬉しいようでもあり、
悲しかったんです。
というかその時は、悲しい感情のがおっきかった気がします。声優は表現するのが声だけだからどうしても、普通の俳優さんとかには敵わない。」
綾瀬さんは、眼鏡をかけ直し
ティーポットを見ながらうつむいた。
「……で、仕方ないなって思いながら帰ろうとしたら、
ぼうっと藤ノ宮さんは宣伝アニメが流れてるとこに立っていたんです。
友達が近くに来て、声をかけられるまで。
で、ようやく気がついた藤ノ宮さんは
この人の声は水みたい。って俺が声を当てた主人公を指さして言ったんです。
水みたいって、何だよって聞いてたら
真っ直ぐなんだと、水みたいにさらっとして冷たい。
でもずっと聞いていたくなる、って。」